(1)モートン足

上の写真は60代男性のもの。第1MP関節と第2MP関節の高さの違いが分かるように印をつけておいた。尚、中程度のモートン足である。

 

モートン足はモートン病とは違うので、区別せねばならない。

モートン病は“病態”であり、モートン足は“構造”の問題である。

いづれもDr.モートンに因んで名付けられていると言われている。

Dr.モートンに関しては、詳しい記述がネット検索でも得られなかったので、ここでも詳述できないが「足病医」の草分け的存在のようだ。

 

日本では足病医という制度自体がない為、認知度は低いが、欧米では産科医とか心臓外科医とかと同様、ポピュラーな専門医であると聞く。Podiatry(足病学)、Podiatrist(足病医)という言葉を知らない人はいないらしい。これは、一日中、靴を履いているというライフスタイルから足のトラブルが日常的に起きているという事情があるからだろう。

 

それはさて置き、モートン足である。

足の構造の“異常”とまで呼べるかどうか分からないが、ある構造上の問題によって、整体的な不都合を受けてしまう、というものだ。

欧米では4人に1人の割合でモートン足だという。日本においては正式な統計はないが、自身の施術経験からいえば、ほぼそんなものではなかろうか。ただし、施術を受けに来る者は身体の不調者であるから、その割合はもっとあるような印象もある。いづれにしても少なからず、足の構造に問題を抱え、それが遠因となって身体の不調をかこつ者がいるということだ。

 

では、どのような構造上の問題であろうか?

言葉でいうと「第一中足骨骨頭と第2中足骨骨頭を比べた場合、第2中足骨骨頭の位置が高い場合のこと」をいうのである。要するに第1MP関節と第2MP関節を比べると、第2MP関節のほうが高い、ということになる。

冒頭の写真で見たほうが一目瞭然で分かりやすいと思うが、もう少し文章での説明を加えておこう。

 

あくまでも中速骨骨頭部分での高さを比べるのであって、中足骨自体の長さや、趾の長さを比べるのではない、ということである。

母趾と第2趾の高さを比べ、第2趾が長くとも、モートン構造ではない者などザラに居るし、母趾と第2趾が同じ高さであっても、甚だしいモートン足の者もいる。中足骨自体の長さを比べる者は居ないと思うが、骨モデルなどを見ると、第2中足骨自体が長い場合がほとんどなので、誤解してしまう者もいるかもしれない。以上、老婆心ながら指摘しておきたい。

 

※言葉で説明しても分かりづらいので写真をご覧になって“高さ”の違いをイメージして頂くしかないと思うが。

 

さて、そうした構造はどのように身体に影響を与えるのであろうか?

 

その前にヒトは足裏に均等な体重をかけているのではない、という事実から説明しなくてはならない。

歩く場合、まず踵から着地し、続いて第1中足骨~母趾球、そして母趾へと伝わっていく。この時、他の部位は補助的な役割をしているに過ぎないのである。

一説によると、体重の5分の4が既出の“踵-第1中足骨-母趾球”のラインに集中する配分となるらしい。

 

さて、そうすると。もしここで第2中足骨骨頭(第2MP関節)が高い位置にあったとしたら、どうだろう?

“踵-第1中足骨-母趾球”という体重移動の流れを邪魔してしまう。つまり第2MP関節があたかも第2母趾球のように“出しゃばって”くることになるのである。

これによって、足底着地の安定が崩れる。ある整体のテキストには「スケート靴を履いて歩くようなものだ」と表現されていたが言い得て妙だ。

 

具体的には足底前方部の第2趾、第3趾までの間くらいに厚い角質層が出来たりする(下記写真③参照)。また足首を外反させ、本来の母趾球で体重を受け止めさせるという補正機能が無意識に働くため、母趾球の内側や、母趾の内側にこれまたタコが出来やすい。または逆バネが働いて小趾側に出来る場合もある。またその者が履く靴などを見ると、踵部分の内減りが極端だったりもする。このような現象は如何に足底が安定的な着地をしていないかの証左と言えよう。であるから、いくらタコを削っても、またすぐに当該部位での角質が厚くなるし、タコも再生産されるわけだから、イタチごっこの様相を呈するのである。美容上も好ましくはないだろう。

 

ことが美容上に留まっていればまだ良い(見えない部分でもあるからだ)。

しかし、これは後々、深刻な問題を起こす可能性が高いということを整体師なら知るべきだと思う。いやむしろ、我々が知らずして誰が指摘できようか。

 

足底着地の不安定さは足首の不安定化を招く。よって、足首の捻挫を起こしやすい。仮に足首の捻挫を起こさなくとも、不安定な足首を補強し、補正するために膝関節に負荷がかかっていく。もしその者が膝をぶつける、捻るなど怪我の既往歴があるなら、負荷に耐えきれず、かなり早い時期に膝のトラブルを抱えることになるだろう。

もし、その者の膝が丈夫で、充分に負荷に耐えられるとしても、不安定であるという歪みの応力は股関節へと移っていき、将来、股関節の痛みや症状に悩まされることになる。

 

股関節への負荷は、殿部筋(ほぼ股関節筋と呼んでも差し支えないだろう)の歪みを招き、そのことによって腰痛を起こすかもしれない。

 

さらに歪みの応力転位は腰筋や腰方形筋にまで及び、腰痛を難治化させる。

さらに・・・人の身体をつながっており一体であるから、最終的には肩・首の歪み(コリ)を増強させ、最終的には頭部(頭蓋骨)の自律的微細運動を妨げることさえ、あり得る。

 

筋骨の頑丈さという個人差もあるし、モートン度合いの差によって、その弊害が現れる時期や、現れる部位も様々であろうが、いづれかの段階で、なんらかの症状に悩まされることになる確率は非常に高い。

 

ことほど左様に、一見するとなんでもない構造上の変位に見えるが、長期スパンで考えると、存外、厄介なのである。

 

解決策

 

解決策の前に、モートン足であるかどうかの確認は必要であろう。幸いにも我々は、施術テーブル上でそれを簡単に見つけることができる。靴下の上からでも構わない。うつ伏せでも仰向けでも、いずれの体勢でも容易に判別できる。

MP関節を屈曲させるだけで簡単に分かるからだ→下記写真②参照)

 

仮にモートン足だと判断したとしよう。

足をよく揉んで、柔らかくしたとしても構造を変えることはできないので、根本的な解決策にはならない。

かと言って、外科手術などで矯正できるような構造異常でもない。

 

以上の観点から考えれば、インソールを工夫し、母趾球部分を若干高くして、第2MP関節の干渉を最小限にする他ないのである。

 

筆者が調べたところによると“モートン病”のインソールは幾種類か市場に出回っているが“モートン足”用のインソールはないようだ。

 

だとすると、自分で(施術者が)作るしかないのだが、さほど費用もかからず、さほどの技術も要らず、手先が器用な者ならおそらくものの5分ほどで作ることができる方法もある。

これの作り方については卒業生専用動画でアップしておきたい。

作り方というほどのものでもないが・・・

 

 

②左写真は20代女性のもの。写真のようにMP関節を屈曲させると、モートン足であるかどうか分かりやすい。

尚、このケースは重度のモートン足である。

写真③

上記写真と同一人物のものであるが、足底前方部(第2趾下)の角質が厚くなっている様子が見て取れる。モートン足の典型的な状態。よく見ると、母趾球やや内側で下側にも角質が付き、厚くなっている。これも典型的な例である。