卒業生の方から「味覚異常」という症状に対して我々が何か出来ることはないだろうか?という質問があった。
味覚異常・・・中々興味深い症状の一つである。近年、マヨラーなどという言葉が流行っていたことは記憶に新しいのではないだろうか?
※知らない人の為に-(どんな食べ物でもマヨネーズをかけて食す一群の人々を指す)
これも味覚障害の一つであるから、随分、その対策については啓蒙されていた。それで初めて亜鉛不足が味覚障害を招くことを知った人も多いに違いない。確かに現代人の食生活は亜鉛が不足しやすいという。
故に最初の対策はこれになると思う。病院であれば医家向けの亜鉛剤、自分でなんとかしたいのであればドラッグストアーで亜鉛含有のサプリメントを購入することだ。
しかし、これがだけが唯一の原因ではないというところにこの症状の面白さ(ちょっと不謹慎な表現か)というか奥深さがあると思う。
実は脳神経12対のうち第7神経と第9神経が味覚を伝える神経であることが分かっている。第7神経とは顔面神経であり、第9神経とは舌咽神経である。顔面神経は舌の前3分の2の部分の味覚を脳に伝え、舌咽神経は後ろ3分の1の味覚受容体の刺激を伝える。
脳神経は末梢神経ではあるけれどもその名の通り、脳から直接分岐しているところに特徴がある。
さて、そうすると、整体分野においては頭蓋仙骨系の守備範囲に入ることになるのは当然だ。思うに、脳膜や脳脊髄液循環に微妙な狂いが生じ、微細な神経伝達の不都合が生じているに違いない。
その原因は首上部の頑固なコリなのかもしれないし、そのまま頭蓋内活動の衰え-クラニアル・リズミック・インパルスの減衰が原因なのかもしれない。相談のクライアントさんは更年期障害にも苦しんでいるとのことであったから、視床下部や脳下垂体の不活性もしくは活動過多も予想される。
どちらにせよ首・肩を緩めることは必須となろう。
そして当然、クラニアル・マニピュレーションという手技でフィニッシュを決める。的確な手技で頭蓋制限を充分に解放できるなら、味覚異常は寛解されるだろう。
按腹も有効である。
発生学的に腸は脳の母であるから(腹管によってセロトニンやドーパミンが産生される事実からも分かる)、腹部と脳の繋がりは決して弱いものではない。古来、日本人が重視した按腹は頭蓋仙骨系の技の一つであったと言えなくもないのである。よって、効果を高めるには按腹をクラニアル・マニピュレーションの前に行えば尚良いのは当然だ。
ところで、昔、味覚異常を足の施術(リフレクソロジー)だけで寛解せしめたことがある。
この機序はなんだったのか?
今なら、実は足もまたクラニアル・リズミック・インパルスを強勢させ得る部位だったということが分かっているので、悩むことはないが、当時は舌の反射区などというものはないし・・・なんで治った?単なる偶然か?としばし悩んだものである。治ったというのなら素直に喜べば良いものを・・・・ま、性分だから仕方ない。
足揉みの師匠は「足は第2の脳」だ」(第2の心臓ではなく)と、ことあるごとに述べていたが、頭蓋仙骨系の発想から言っても間違ってはいなかったのである。師匠の言葉は後になって効いてくるものだ。
『腹は脳の母であり、足は第2の脳である』
こいうことが決して間違いとは言えないので、整体の世界は面白いのである。
ともあれ、味覚異常という奇病の類に整体は不適応と考えられてきたが、決してそんなことはないということを心に留め置かれて頂ければ幸いである。