普通、低血糖よりも高血糖、つまり糖尿病を心配される向きが多い。生活習慣病の一つとして、専門医もいるくらいだから、一般の認識ではほぼ血糖値の高さを気にすることだろう。というわけで低血糖というと糖尿病治療の過程において、薬の効きすぎによる一時的な症状の一つくらいにしか考えてないと思う。(これはこれで怖いことではあるけれども)
そのような無認識が、実は重大な社会問題になっているのを知っている人は医師を含め、極めて少数であることは非常に大きな問題だと思う。アメリカの疫学調査においては、暴力事件を起こしたほとんど者が低血糖症であるという報告が為されている。
基本的に、血糖値というのは空腹時や食後によって変動はあるが、概ね60㎎~160㎎くらいが正常であるとされている。そしてある時点で60㎎を下回ってしまうか、高低差が一時間に50㎎以上ある場合に低血糖症と判断される。しかしそのある時点というのが中々厄介で、糖負荷試験を最低でも5時間後まで毎時間測らねば正確な低血糖症とは診断できない。そしてそれは重大な問題だという認識がないため、ほとんどの医療機関では、そのような面倒なことはせず、ごく普通に見逃してしまっている。ここに社会の隠れた病巣があるのである。
では何故、低血糖症になるのだろうか?
ずばり、砂糖たっぷりの清涼飲料水や菓子類が元凶だ。
(なんという逆説的な!)
これらのものを常時、飲食していると、当然、血糖値があがる。常態化すると高血糖状態、すなわち糖尿病の初期(境界型)ということになるわけだから、これらの観点からその飲食習慣はよろしくない、ということになっている。しかし、その前の段階というものを無視してはならない。
砂糖に代表される二糖類はご飯や他の穀類の多糖類と違って、分解が早い。つまり、急激な高血糖をもたらす。このときに膵臓が刺激されインスリン分泌が盛んになるのである。これが常態化すれば膵臓が疲弊したり、各細胞のインスリンレセプターがダメになってⅡ型糖尿病となるのはご承知の通りである。しかし、そこに行き着く前に、インスリン刺激が過剰になり、先に定義した低血糖状態に陥る。これが盲点中の盲点だ。実際、境界型糖尿病と診断された者でも厳密には低血糖症の範疇にある者もいるくらいである。
低血糖状態は低エネルギー状態でもあるから、身体は緊急にノルアドレナリンを放出するのと同時に副腎からはアドレンリンも放出する。これによって肝臓からグルコースが放出され、低エネルギー状態から脱することになるのだから、身体の仕組みというのは、実に巧妙で、よく出来ているのだが、喜んでばかりはいられない。
アドレナリンは別名闘争ホルモンと言われるが如く、怒り、敵意、暴力といった攻撃的感情を刺激し、ノルアドレナリンは不安、恐怖、強迫観念、自殺願望などの情動を刺激する。
暴力性を有するかどうかは、その人の性格や体質の問題でもあるが、所謂、「引きこもり」に陥っていた人の食生活をみると、多量の清涼飲料水を常飲し、ろくな食事も摂らず、菓子類ばかりを食べていることが多いのである。さらに、アドレンリンは酸化するとアドレノクロムという物質に変質する。これは幻覚や幻聴などを引き起こす毒性物質である。
たまたま、低血糖状態でアドレナリンシャワーを浴びている者の身体に抗酸化物質が不足していれば、アドレノクロムが蓄積し、幻覚と幻聴が引き起こされるだろう。こうなるともはや人格の崩壊である。(統合失調症と診断されることが多い)
さて、私のブログは基本的には手技に関することが多いのだが、何故このような拙論を書くに至ったかを説明したい。それはこの度の神奈川県におけるU容疑者(この期に及んでは匿名も意味なかろうが)が起こした障害者施設における惨劇のニュースを見てのことであった。
ふと気になったのは、途中、Uはコンビニで菓子パンを買っていると報道されたことである。さらに、両親と離れ一人暮らしを始めていたという報道もなされた。この男、ろくな食事も摂らない典型的な菓子パン&清涼飲料水人間なのではなかろうか?そのような疑念が一瞬よぎったのである。また、ヒトラーが降りてきたとか、常人には理解しがたい言動を吐いたりもしている。もともと妄想性人格障害的な素養があったのかもしれないが、低血糖症であることが引き金になっているかもしれない・・・と。
もとよりこの人間を庇うつもりは毛頭ない。これほどの冷酷非情な殺傷事件を起こして、精神鑑定で無罪などというのは悪夢でしかない。実際、精神科に入院したとき、医者を騙して退院してきたと、うそぶいているくらいだから、責任能力ありと判断され有罪となるだろう。そして有罪ならば殺傷人数からみて死刑は免れない。あくまでもこの拙論のキッカケになったという意味で、この事件を取り上げたのであって、この容疑者の精神状態や事件の背景を探る目的ではないということをご承知置き願いたい。
今、日本では25万~70万人の人間が引きこもり状態に陥っているという(幅があるのは統計をとった省庁の違い。おそらくは定義の違いだろう)。中には暴力性を有し、家族を不幸のどん底に突き落としている例もある。この全部とは言わないが、相当の確率で、食生活が崩壊していたのではないか、と思うのである。
日本では世界的にみても突出して多い「引きこもり」。たださえ、少子高齢化だというのに、この状態を放置すれば国力の衰退を免れないし、それ以上に家族を巻き込んで深刻な事件も起きているのは大問題である。
ゆえに低血糖症を招く菓子パン類、砂糖たっぷりの清涼飲料水などは食卓から追放すべきである。
※1 追放すべきとしたのは、強い表現をし、記憶に残して貰いたかったからである。実際、こども達にも楽しみが必要であるから、3時のおやつ的に量を制限して与えるのは問題ないと思う。深刻な事態に陥っている者の特徴は無制限に好きなだけ摂るという生活をしているのであるから。また砂糖を使わない人工甘味料なら良いだろう、という向きもあるが、これはこれで別の意味で問題である。やはり量の制限しかない。
※2 若者だけではなく、キレる老人たちが問題になっている。これも食生活の問題であるような気がする。日本人の食生活は戦後10年ほどでほぼ破綻していていると言って良い。例えば、脳の健康に欠かせないオメガ3系の必須脂肪酸は酸化しやすいため、食物加工の段階でほとんど取り除かれている。今時、オメガ3系の脂肪酸を充分に摂取できているのは一部の漁師達くらいだろう(DHAやEPAなど・・魚介類に豊富)。
せっかくだから、手技療法の立場で、こうした人達に何ができるかを探ってみたい。身体にとって何か欠けている、もしくは何かが過剰な場合は、それを解消すべく食生活を変えるのは当然である。その上で考えるならば、手技の持つ身体の掃除的な役割はきっと役立つに違いない。例えば、アドレナリンシャワーを浴びるくらいの状態というのは極めて強い交感神経緊張状態でもある。これを速やか可及的に中和し得るのは手技療法の独壇場と言えだろう。
また毒性物質の排出も副交感優位の作用と相まって、体液循環の正常化に伴い正しく行わることだろう。
そもそも毒性物質を生み出す活性酸素は腸内異常発酵により起こることが多い。(悪玉菌の増殖)これに対応するには手技の按腹か、リフレクソロジーがより効率的だ。特に日本人の知恵が詰まった按腹は、特段の事情がないかぎり、最強のアイテムとなろう。
また脳への血流は首のコリの状態が鍵を握っている(首と肩は一体化しているので肩こりも勿論、含まる)。パニック障害なども低血糖症が引き金になっているという事実と、手技による首と肩のコリ緩和効果がパニック障害に有効な事実を照らし合わせると、暴力性を伴おうと、ウツを伴おうと「引きこもり」全体に有効ではないという考えるほうが不自然だ。
こうして手技療法は「心の病」系にも有効なのだが、あくまで食生活の改善が前提である。これだけは、くどいようだが、念押して置きたい。