(医学的にお尻のことを記述する場合、臀部ではなく殿部と書きます)
一般的な腰痛
腰痛は整体適応の中で1、2を争うくらい多い症例でしょう。実際、多くの方がその症状で悩み、苦しまれているわけです。
そして、その実態もありのままに診てきました。
「腰痛は2足歩行する人類の宿命みたいなものだ」と述べた人もいます。この言葉は、半分当たっているのではないかと思っております。
その心は?
実は2足歩行する人類は、他の動物に比べ、殿部がその比率から言って異常なくらいに発達しております。2本の足だけで移動する為に、その脚や足を動かし、コントロールするのはほとんど殿部の筋肉が担当することになり、強い負荷がかかることになったからです。
そして、この負荷のかかっている殿部筋の異常こそが腰痛の原因の第一位なのです。腰が痛いわけですから、腰を一生懸命、擦ったり、揉んだりします。しかし原因である殿部筋に手が行ってないのですから、治癒率が低くなるのは当然です。
腰の筋肉は全く関係ないというわけではありませんが、少なくとも、腰痛の原因の第一位ではありません。むしろ腰の筋肉は、殿部痛を生むことが多く、場合によっては、股関節の痛みをもたらします(盲点)。
そして次に述べることも大事なのですが、あまり知る人は居ません。それは、大腰筋と言われる、背骨の前側に付いている筋肉に問題が起きて、腰痛に至っている場合です。
この筋肉は背面からは触ることが出来ず、お腹側からしかアプローチできません。したがって、臨床上、この筋肉を処置するケースは少なく、結果として、腰痛原因の第2位くらいの位置づけとなるのです。
以上、当流儀においての腰痛のアプローチは、腰回りはもちろんですが、殿部と腹部への操作を欠かすことなく行います。
腰痛の盲点となる部位の漏れをなくすことによって、他には例を見ない改善率を誇るに至っております。
腰痛に悩む方、是非、最寄りのリフレパシー整体院を訪れてみてください。試す価値は充分にあるかと思います。
椎間板ヘルニアによる腰痛
椎間板を省略して、単にヘルニアと称することが多いのですが、意味は“飛び出す”もしくは“飛び出した状態”の総称です。そういう意味で、脱腸のことをヘルニアという場合もありますし、脳の障害で脳ヘルニアという病態もあります。
ここでは腰痛関連についての記述ですから、腰椎と腰椎の間にある椎間板という骨に比べれば柔らかい軟骨が潰れて、芯にある髄核というゼリー状のものが外に飛び出す病態のことについて述べたいと思います。
従来、この髄核が飛び出してしまったら、もう手術するより他ない、という見解が主流だったのですが、近年、医学の発達によって、そうではない、ということが分かってきました。
どのようなことかというと、我々の身体の中には貪食能を持つマクロファージという免疫細胞の原型のような細胞が多く存在しています。
そして、このマクロファージが飛び出したヘルニア(髄核)を食べてくれます。これによって神経の圧迫や伸張が取れ、痛みがなくなるのです。近年、有名な事実となりましたので、テレビ等で何度か取り上げられておりますから、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
ところで、椎間板には血管が走行しておりません。これを滋養し、再生させているのはリンパ液なのですが、筋肉等の緊張(コリ)などで、その供給が充分でなくなります。そうすると、せっかくヘルニアを食べてくれるマクロファージが居たとしても、そこに充分、集まってくれません。そうするとヘルニアが退縮していくスピードが遅くなり、治癒が中々進まないという状況になってしまうわけです。
そこで、我々が周辺の筋肉を加減良く緩めてあげることによって、リンパ液が行き渡り、マクロファージが集まって、ヘルニアが退縮するのみならず、椎間板そのものの再生も促されるという一石二鳥の効果があるわけです。
椎間板ヘルニアによる腰痛は、殿部や大腰筋が原因の腰痛よりも頻度はかなり少なくなりますが、確かにそういう方もいらっしゃいます。時間は多少かかったとしても、我々の適応症であるとご理解頂ければ幸いです。医療機関でのブロック注射との併用でも問題ありません。
非常に特殊な腰痛(ペイン・マトリックス症候群)
これが近年、大きく問題になっている腰痛の病態で、確かな統計はないのですが、相当数、いるのではないかと言われています。
もしかすると、長年、患っている貴方の慢性腰痛症も、この特殊な部類の病態から来ているのかもしれません。
どこが特殊かというと、腰や殿部に問題に起きているではなくて、脳の痛覚中枢が過敏になっていて腰痛を感じるという、まさに“特殊な”と呼ぶにふさわしい腰痛なのです。
これの厄介なところは、リアルに腰痛として感じますので、腰に問題などない!と言われても、にわかには信じられないところにあります。
「脳が感じているだけであって、腰には問題ありませんよ」と言っても「バカにするな!現実に腰が痛いんだぞ!」と中々、素直に聞き入れてくれません。
それにしても、どうしてこんなことが起きるのでしょうか?
キッカケは確かにあるのです。強いストレス下においてギックリ腰的に腰を痛めてしまったとか、或いはもともと腰痛気味のところにもってきて、精神的に何らかの強い感情が襲ったとか・・・
そのときに、様々な種類の刺激(感情的刺激も含む)が痛覚を刺激するという脳の癖がついてしまうというのか、別の言い方をすれば「痛覚中枢の拡大」のような状態に陥ることがあるわけです。
特に、負の感情-怒り、恐怖、悲嘆などと結びつきやすく、悪循環の中で、中々治らない自分自身に腹を立てたり、将来どんなことになるのだろう?と不安を感じたり、その感情が顕在化していなくとも、ずっと脳を刺激し続け、そして腰痛を感じ続けるのです。中には10年以上も腰痛に悩まされ、仕事に就けなかったりするという重症の方も居て、たかが腰痛どころの騒ぎではありません。死活問題です。
治す方法としては認知行動療法とか、カウンセリングといった心理療法によるのですが、そこまで辿りくまでが「長い道のり」です。しかも、そういった療法は習熟した術者は少なく、さらに即効性がないので、自暴自棄になって止めてしまう人も多いようです。
我々の方法論は、手技療法家ですから、カウンセリングだけを用いるのではありません。そういったこともある、と分かってもらった上で、キッカケになった問題部位を探し、施術します。
それは先に述べた殿部にあるのかもしれませんし、腹部アプローチで見つかることもあります(感情とお腹というのは非常に密接なので、腹部アプローチで見つかるケースが多いように思いますが)。
ただし、単純な腰痛ではないので、いっとき楽になる感じはあるにしても、波のようにまた強い腰痛が襲ってきたりします。
その波が、大波から小波に少しづつ変わっていき、最後はその状態から脱出することになるわけです。
普通の腰痛と違って、脳の思い込みを正す(?)わけですから、少し時間がかかるかもしれません。しかし、この類の腰痛は我々が最後の砦になる可能性が高いのです。そうでなければ、ウデの良い認知行動療法家や心理療法家を探すしかありません。我々の業界もそうですが、そうした業界の術者のウデはピンキリですので、宝くじに当たる確率でしかないということを覚悟すべきでしょう。
この類の腰痛は難治性と言ってもよい病態ですが、我々の適応症であることは是非、知って頂きたいと思う次第です。